雪国の食文化が育んできた発酵の「複雑な味わい」
日本酒、味噌、醤油といった発酵・醸造蔵が集積する長岡市・摂田屋地区。鈴木さんがここにお店を開いたのは初めてではありません。2020年には、古い蔵を改装した地域の交流拠点「摂田屋6番街 発酵ミュージアム・米蔵」のなかに「おむすびと汁と茶 6SUBI(むすび)」を出店しています。
「摂田屋は発酵・醸造蔵や歴史的建造物を『見に行く』場所でしたが、飲食店が入ることでその土地でつくられているものを実際に『食べる』場所になったらいいなと思って。6SUBIは摂田屋でつくられた食材や発酵食品を使った料理を提供し、近隣の蔵を紹介するなど、地域の産業をつなぐ役割を担っています」(鈴木さん)
一方で、2024年12月に開店したWILLOW HOUSEは「お店で研究を重ねて生み出した、オリジナルの発酵食品を体験してもらう場」。目玉のひとつは天然酵母のパンで、フルーツや米麹から起こした酵母でパンを作っています。
築150年以上のお屋敷「青柳邸」をリノベーションしたWILLOW HOUSE。「建物が売りに出たとき、なにもしないと壊されてしまうと思い、すぐに手を挙げました」と鈴木さん。
パンはすべて自家製で、店内の薪窯で焼いている。米麹から起こした酵母でパンをつくることも。長岡のあたりでは、昔から「酒饅頭」という、米と麹から作った酒種を生地に加えて発酵させたまんじゅうがあり「ある意味でこの土地ではスタンダードなパンかも」と鈴木さんは言う。
店内にある小麦の製粉機。小麦は新潟県や北海道産のものを使用。全粒の状態で仕入れて、製粉している。長岡産の小麦も一部使っている。
もうひとつは、お店でつくるユニークな発酵調味料。もともとSUZU GROUPのお店では農家さんから直接仕入れた食材、特にはねもの(規格に合わず、出荷しにくい野菜や果物)を使ってジャムやドリンクシロップなどを作ってきましたが、WILLOW HOUSEでは、それを酵母や麹で発酵させています。「もともと自分で発酵を学んで実験していくなかで、いろんな調味料をつくれると気づいて」と、鈴木さん。
例えば、最近仕込んだのは、細かく刻んだはねもののすだちを塩と麹と合わせて発酵させた調味料。ほかにも、フルーツの酵母で発酵させたドリンクシロップ、新潟名