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新潟県民が愛する氷菓「もも太郎」とは?
夏といえばアイス。そして新潟県民にとってアイスと言えば、そう、「もも太郎」です。
今回は、新潟県民のソウルフード・もも太郎の誕生秘話や製造上のこだわり、さらには妹的存在として活躍中の「ももえちゃん」が生まれたいきさつ、果ては幻の兄弟「うらしま亀太郎」の存在などなど、新潟県民なら誰もが気になるであろう疑問について調査してみました。
新潟県民の皆さんには説明不要かもしれませんが、今一度、もも太郎についておさらいしておきましょう。もも太郎は、新潟県内のほとんどのスーパー・コンビニで販売されており、新潟県民ならば知らない人はいないというほどの知名度と70年以上の歴史を持つ、新潟を代表する名物氷菓(かき氷バー)です。
新潟のイカれたアイスを紹介するぜ!!!りんご果汁でできてるイチゴ味のもも太郎!!!以上だ!!! pic.twitter.com/UbGIQUadkw
— むつみ (@mutumi420) January 20, 2016
2019年現在では、株式会社セイヒョー(新潟県新潟市)と第一食品株式会社(新潟県燕市)の2社のみが製造・販売を行っており、テレビ番組「マツコの知らない世界」「月曜から夜ふかし」など数々のメディアで取り上げられた実績を持ちます。
「リンゴ果汁を含みながらイチゴ味を謳い、モモを名乗る」という矛盾した姿はSNSでもたびたび話題となり、今やその知名度は全国区に。価格は1本60円(税別)。
代表的メーカー「セイヒョー」を訪問!
もも太郎のことなら、やはりメーカーさんに尋ねるのが一番!ということで、もも太郎の代表的メーカー「株式会社セイヒョー」を訪ね、お話をうかがってきました。
迎えてくれたのは管理部主任の阿部さん。新卒でセイヒョーに入社して以来、セイヒョー一筋10年のキャリアを持つというベテラン社員さんですから、いわばもも太郎の専門家です。どんな裏話が聞けるのでしょうか?楽しみです!
社員さんにいろいろ聞いてみた
――まずはセイヒョーさんの歴史と、もも太郎誕生のいきさつについて教えてください。
阿部さん「セイヒョーは大正5年(1916年)、『氷づくり』を主軸事業として創業しました。湊町に本社を構え、主に水揚げされた魚を冷やすための氷を販売していたんです。また、冷蔵庫がまだ一般に普及していない時代でしたので、保冷庫用の氷なんかも取り扱っていたんですよ」
ハッ…。「セイヒョー=製氷」!?「氷づくり」から身を立てた会社だったんですね。恥ずかしながらまったく気が付きませんでした…。
商品名の由来と商品誕生のきっかけは?
――では、「もも太郎」という商品名の由来、セイヒョーさんがもも太郎を氷菓として販売し始めたいきさつを教えてください。
阿部さん「もも太郎は、セイヒョーが独自に生み出したものではなく、もともとはお祭りの出店で売られていた氷菓なんです。当時はモモの形をした『桃型』という木型に氷とシロップを入れて成形し、割り箸を刺して食べていたそうです。セイヒョーがそれを昭和20年代に商品化したのが、現在のもも太郎の原型なんです」
ほほ~。「もも太郎」という呼び名は特定のお店や企業の商品名ではなく、出店で販売する商品を指す一般名称だったんですね。「ベビーカステラ」とか「りんご飴」的な存在だったわけか…。
阿部さんによれば、出店で販売される氷菓としての「もも太郎」が他県で認知されていたという話は耳にしたことがなく、おそらくは新潟地方の屋台を中心に普及していた氷菓だったのでは、とのこと。
ちなみに出店で使われていた「桃型」はとうの昔に姿を消してしまっているのだそうで、今日ではその形を想像することしかできません。残念…!
もも太郎は結局何味なの?成分は?
ー―「もも太郎」という商品名、イチゴ味の表記、リンゴ果汁入り、という矛盾した様がよく話題になりますが、結局、もも太郎って何味なんでしょうか?
阿部さん「イチゴ味ですね」(キッパリ)
――なるほど、そこはやはりパッケージ通りなんですね!ちなみに、モモのエキスも少しくらいは入って……
阿部さん「一切入ってません」(食い気味)
――すがすがしい(笑)。リンゴ果汁が入っているということは、実質リンゴ味なのでは?
阿部さん「いいえ(笑)。リンゴ果汁はあくまでアイスにさっぱり感をプラスするという目的で入れているもので、リンゴの風味を持たせるものではないんです。ちなみに、リンゴ果汁はもも太郎が誕生した当初は使われていなかったんですよ。今から30年ほど前に行われた製品改良の際に採用され、好評を博して以来、セイヒョーのもも太郎にはリンゴ果汁が含まれるようになりました。夏の暑い日に召し上がっていただくものですので、やはり、さっぱり感が大切なんです。もも太郎以外のセイヒョー製品にもリンゴ果汁を隠し味として使用したものがあるんですよ」
製造における最大のこだわりは?
――製造における最大のこだわりを教えてください。
阿部さん「一番のこだわりは大きな『氷つぶ』です。重さ135キロの角氷を、あえて粗めの氷つぶが残るように砕き、シロップと混ぜて仕上げています。元々が氷づくりの会社ですから、氷を噛み砕く際のザクザク食感をしっかり感じてほしいという思いから、こうした製造方法をとっています。ここ数年はフワフワ食感のかき氷がブームになっていますが、もも太郎はその真逆を行く存在ですね(笑)」
――もも太郎が新潟県民に愛され続けてきた理由は何だと思いますか?
阿部さん「バータイプのイチゴ氷菓が珍しいということや、氷のおいしさ、ザクザク食感といった独自の特徴なども挙げられますが、一番の理由は、どの時代にあっても幅広い年代に受け入れられる親しみやすさがあったからかもしれません。だからこそ、時代が変わっても常に固定客に恵まれ、そういった皆さんがもも太郎の歴史を支えてくださっているのだと思います」
妹的存在「ももえちゃん」誕生の経緯は?
――続いては、もも太郎の妹分「ももえちゃん」について教えてください。2013年より毎年フレーバーを変更しながら発売されている夏季限定商品・ももえちゃん(2019年6月には赤ぶどう味の販売を開始)は、どのような経緯で誕生したのですか?
阿部さん「もも太郎なのにモモ味じゃない、という主旨の投稿がSNSで話題になった際、社内で『それならば、モモ味のもも太郎を作ってみよう!』という話が持ち上がり、初代のももえちゃんピーチ味(2013年)が生まれました。この翌年には、フレーバーが毎年変化していくこと、『ももえちゃん』という名称は固定とすることなどが決定し、以来、毎年プロジェクトを立ち上げ、開発に取り組んでいます」
なんと!ももえちゃん誕生のきっかけはSNSだったのですね…!それにしても、ネタにされたことを逆手に取ったセイヒョーさんの切り返しが素敵すぎる(笑)。なお、ももえちゃんは毎年6月に販売をスタートするため、前年の秋~冬には企画・開発を終え、年初には製造を始めているんだとか。1年がかりの壮大なプロジェクトなんですね…!
――毎年のフレーバーはどのように決められるのですか?また、過去に落選してしまったフレーバーの候補を教えてください。
阿部さん「その年のグルメトレンドや人気のくだものなどからフレーバーの候補を挙げます。その後、しぼった候補から試作品を作り、開発会議でその年のフレーバーを決定します。くだものから選ぶ決まりがあるわけではないのですが、暑い時期に食べるものですので、さっぱりとした味=くだものという結論になることが多いですね。今年はマスカット味やメロンソーダ味が残念ながらボツになってしまいました」
マスカット味にメロンソーダ味…。企画会議の加熱ぶりが容易に想像できる…!。特にメロンソーダ味は気になるなぁ~。ぜひ来年以降に実現してほしいものです!
――今年のフレーバー「赤ブドウ」の特徴を教えてください。
阿部さん「ブドウの濃厚さが最大のウリです。ももえちゃんは、もも太郎とまったく同じ製造方法で作られているために大きな氷つぶをたくさん含んでおり、全体に占める水分の割合が大きいんです。それにも関わらず仕上がりは果汁30%ですので、その数字以上に濃厚なブドウの味を感じられると思います。果汁30%という割合はセイヒョー製品の中でもかなり高い数値なんですよ」
ちなみに、もも太郎に含まれる果汁は6%。数値だけを見ても「果実感」に対するセイヒョーさんのこだわりがうかがえます。(後日、実際に商品を食べてみましたが、ブドウ感がハンパじゃない!噛むたびに甘酸っぱいブドウのジュースがしたたるように染み出てきます。コンビニやスーパーで見かけたら、ぜひ一度お試しを!)
幻の兄弟「うらしま亀太郎」の行方は?
皆さんは、数年前に姿を消したセイヒョーの氷菓「うらしま亀太郎」をご存じでしょうか?風のように現れ、去っていった幻の兄弟についても聞いてみました。
柿味のうらしま亀太郎もよろしく pic.twitter.com/1rRBjPAWBu
— きょん (@kyon_okome) January 22, 2016
――もも太郎には「うらしま亀太郎」という幻の兄弟がいるといううわさを聞きました。今もどこかで販売しているのでしょうか?
阿部さん「『うらしま亀太郎』は、もも太郎の姉妹品として販売されていた氷菓です。フレーバーは『柿』です。10年ほど前、2~3年間だけ発売されていましたが、あまり一般的はでないフレーバーだったためか販売数が伸びず、残念ながら現在は販売を停止しています」
――「柿」とは攻めましたね…!個人的にはすごく興味をひかれますが、時代が付いてこられなかったんだと思います(笑)。今後、復活の可能性はあるのでしょうか?
阿部さん「販売停止からしばらくの間はファンの方からの問い合わせが頻繁にあったので、一部には強い支持があったと思うのですが…。残念ながら現在のところ、復活の話は出ていません・・・(笑)」
ん~。残念。「うらしま亀太郎」にはちょっぴり悲しい歴史があったのですね…。まさに幻の氷菓。販売期間中に出会えた方はラッキーだったと言えるでしょう。一度でいいから食べてみたかった!
もも太郎、ももえちゃん、うらしま亀太郎にはそれぞれまったく異なる歴史があったんですね…!この知識は新潟県民の一般教養科目にしてもいいと思う!
阿部さん、貴重なお話をありがとうございました!
―――――― おまけ ――――――
もも太郎の歴史を学んだところで、少しはみだし情報を。
新潟県内であれば、コンビニやスーパーで簡単にもも太郎を購入することができますが、セイヒョーの豊栄工場まで足を伸ばせば、ある「お楽しみ」を体験できるのです。また、新潟県外にいながらセイヒョーのもも太郎を購入する方法も併せて押さえておきましょう。
1袋400円の「アイス詰め放題」が大人気!もも太郎アンテナショップ
セイヒョーの創業100周年に合わせ、広告・販促活動の一環としてオープンした直営のアンテナショップ「もも太郎ハウス」をご存じですか?
このアンテナショップは新潟市北区にあるセイヒョー豊栄工場の敷地内にあり、セイヒョーの定番商品のほか「ル レクチエ」や「越後姫」といった地元の特産品を使用したこだわりのアイス、さらに「笹だんご」などの和菓子まで、セイヒョー商品なら何でも取りそろえているんです。
そして、もも太郎ハウスでのお楽しみといえば、なんといっても人気サービス「アイス詰め放題」。製造の過程で出た規格外品を対象に、セイヒョーのアイスを袋いっぱいに詰めて購入できるんです。料金は1回(袋)400円という超破格!ぜひ一度足を運んでみてくださいね。
※もも太郎ハウスは冬期間には営業を停止していますのでご注意ください。お店の営業情報は以下の通りです。
店名:もも太郎ハウス
住所:新潟市北区木崎下山1782-1 セイヒョー豊栄工場敷地内
営業期間:3月~11月
営業時間:10時~16時
定休:木曜(5~8月)、木・日曜・祝日(3月、4月、9月~11月)
公式ホームページ:http://www.seihyo.co.jp/shop/
県外からセイヒョーのもも太郎を購入する方法は?通信販売はある?
セイヒョーのもも太郎を新潟県外から購入するには主にふたつの方法があります。
1)表参道・新潟館ネスパスで購入する
東京をはじめ、首都圏にお住まいの方であれば、渋谷区神宮前、表参道ヒルズとなりにある「表参道・新潟館ネスパス」で購入することができます。もも太郎をはじめ、「かきの種」、「かんずり」、「ぽっぽ焼き」、「エチゴビール」、「新潟チップス」といった新潟の特産品がズラリ。ぜひ一度足を運んでみてください。
◎表参道・新潟館ネスパス
https://www.nico.or.jp/nespace/
2)セイヒョーウェブショップで購入する
セイヒョーが運営するオンラインショップ「セイヒョーウェブショップ」での購入も可能です。もも太郎のほかにも「ビバリッチ」、「ゆきっこアイス」といったセイヒョーの人気商品や新潟名物・笹だんごなども販売しています。近くのスーパーなどでゲットできない場合はセイヒョーウェブショップを利用しましょう。
◎セイヒョーウェブショップ
取材を終えて
子どもの頃から親しんできたもも太郎。あの飾り気のない氷菓には、ひと言では語り尽くせない歴史とたくさんの工夫が詰まっていました。
ライバル氷菓が現れては消えていく中、70年以上も新潟県民の冷凍庫にあり続けたもも太郎の姿を思うと、なんだか少し泣けてくるような、感謝したくなるような気持ちになります。
今年の夏はもも太郎がいっそう味わい深くなりそうです…!
取材・文・撮影:Komachi Web編集部 和田圭太
情報は掲載当時のものです。念のため電話で情報をお確かめになってからお出かけください。閉店店舗については、随時メンテナンスを行っています。間違いを通報する