11月1日(金)公開 映画『十一の賊軍』【白石和彌監督&木竜麻生さん/千原せいじさん&小柳亮太さんインタビュー】

11月1日(金)公開 映画『十一の賊軍』【白石和彌監督&木竜麻生さん/千原せいじさん&小柳亮太さんインタビュー】
山田孝之・仲野太賀W主演、「仁義なき戦い」シリーズの脚本家・笠原和夫が1964年に執筆したプロットを現代に蘇らせた時代劇。「孤狼の血」「極悪女王」を手掛けた白石和彌監督最新作。溝口加奈を演じた木竜麻生さんと白石監督に作品への思いやエピソードなどを伺いました。
【白石和彌監督&木竜麻生さんインタビュー】

いよいよ公開間近となりました。まずは封切りを控えて、今の率直なお気持ちをお聞かせください。
白石 そうですね。撮影していたのは去年で、準備を含めると半年近くかけて撮影しました。完成まで本当に大変な作品で、スケールも大きく、時代劇ということで非常に苦労しました。でも、完成してからここまであっという間で、いよいよ多くの人に見てもらえると思うと、毎日ドキドキしながら眠れない日々が続いています。早く公開して、皆さんの感想を聞きたいという気持ちです。
「仁義なき戦い」シリーズなどで知られる脚本家・笠原和夫さんが執筆したプロットを、60年の時を経て映画化する際に、監督として声をかけられた時の心境はいかがでしたか?
白石 いわゆる集団抗争時代劇のような映画が昔から大好きで、今回の映画もその系譜に入る作品です。笠原さんのプロットを読んだ時、「これは大変だな」と思う一方で、笠原さんの天才的な設定が活かせれば、今の時代にも通じる作品になるだろうと感じました。それで、プロデューサーに相談して、なんとかこのプロジェクトをやりたいと強く思いました。
笠原和夫さんのご家族ともやり取りがあったと伺いました。
白石 はい、奥様がいらっしゃいます。去年の撮影前、笠原さんの誕生日に奥様と一緒にお墓参りをして、その後食事をしながら「こういう形で映画化させていただきます」と報告しました。笠原さんが亡くなられてかなり時間が経っていますが、残されたプロットを映画化できたことに感謝されました。笠原さんは日本の映画界でも大きな存在ですから、名誉に傷をつけないように、気合いを入れて映画化しました。笠原さんがどこかで見守ってくれているといいなと思っています。
白石和彌監督の作品では、役者さんが体当たりの演技をされている印象がありますが、今回の『十一人の賊軍』でも迫力ある演技が目立ちます。撮影において特に心がけたことはありますか?
白石 俳優たちにとって、この作品が重要だと思ってもらえるような役を演じてもらうことが大切だと感じています。例えば、溝口加奈という役は、木竜さんにお願いするしかないと思いました。木竜さんなら、この役を断らないだろうと確信していました。そういったことが作品に力を与えるので、1つ1つの役にメッセージを込めて演じてもらうよう心がけています。
新潟が統一されていない時代、多数の正義がぶつかり合っています。白石監督にとって、この作品での正義とはどのように感じ、表現しましたか?
白石 正義とは何か、悪とは何かというテーマは昔から通ってきたものですが、今回は日本の内戦の話で、正義の裏には悪ではなく、別の正義があることを感じました。それは笠原さんのプロットにも表れていて、現代にも通じる部分があると感じました。人によって正義の定義が違うからこそ、悲劇が生まれるというのが今回の作品の大きなテーマだと思っています。
時代の不条理に翻弄されながらも「決死隊」として砦を守る罪人たちに焦点を当てたこの作品に込めた想いをお聞かせください。
白石 例えば、幕末の戦争を描く時、白虎隊のような誇り高いヒーローたちが散っていく物語が多いですが、罪人が主人公となるこの作品は、そうしたヒーロー像から外れます。侍が嘘をついたり逃げたりするというアンチヒーロー的な集まりがこの映画の魅力だと思っています
木竜麻生さんに質問です。今回の『十一人の賊軍』で印象的だったシーンや、苦労したシーンはありますか?
木竜 全体的に、肉体的な大変さは他のキャストに比べて少なかったかもしれませんが、それぞれのキャラクターが大切にしているものや思いを表現するのが難しかったです。溝口加奈という役も、多面的な部分を持っていて、言葉や行動の奥にある彼女の本心を、見た人が想像できるように演じました。
溝口加奈を演じるにあたって特に心がけたことはありますか?
木竜 時代劇なので、当時の女性らしさを大切にしつつ、キャラクターの独自性を両立させるよう心がけました。彼女の心情を豊かに表現できるようにしました。
木竜麻生さんの出身地・新発田が物語の舞台ですが、地元からの反応はありましたか?
木竜 同級生や親戚がこの作品を楽しみにしていて、「地元が舞台になった」と喜んでくれています。
監督にもお伺いしたいのですが、作品を拝見したところ、泥だらけで壮絶な撮影だったように感じました。現場の雰囲気はどのような感じだったのでしょうか?
白石 ドッタンバッタンでした(笑)。砦周りのシーンは千葉の採石場跡地で撮影していて、そこに橋や本丸などを建てて、360度どこを撮っても大丈夫な状態で進めていました。山奥という環境もあって、スタッフやキャストは本当に苦労した部分が多かったですね。でもそれは最初から予想していたことなので、みんなその中でどう楽しみながら作れるかを意識していました。お互い声をかけ合ったり、撮影が終わった人が戻ってきて鍋を作ってくれたりと、人との繋がりの中で進めていけたんです。僕としては、本当に皆さんが盛り上げてくれたおかげで作れた映画であり、組全体の愛に助けられた作品だと感じています。
この作品では、障害者の方や罪人として捕らえられた方が登場しますが、監督の作品にはそういった方々が描かれることが多いと思います。そうしたマイノリティの方々に対する思いがあるのでしょうか?
白石 あります。ネタバレも含むので、どこまで話していいのか難しいのですが、笠原さんが作ったものとは大きく変わっていて、特にラストが違うんです。本来、笠原さんのプロットでは11人全員が砦で亡くなる予定でしたが、映画では何人か生き残りますよね。生き残る人たちが実は弱者であることがポイントなんです。これは第二次世界大戦までは、日本でも「一億総玉砕」のように、敵が来たら全員で戦って死ぬのが美徳だと教えられていた時代の話ですが、戦争がなくなってからは考え方が変わってきました。それでも、いつまた戦争が起きるかわかりません。そんな中で、逃げること、生き残ることの重要性を強調するメッセージを込めて、今回のラストにしました。健常者もマイノリティも関係なく、誰にでも共通するテーマとして描きたかったんです。
また、耳の不自由なキャラクターも登場しますが、これは学者や研究者の間でも話題になっているように、江戸時代では今よりも差別されず、彼らにも仕事が与えられていたとされていて、その点が非常に興味深かったんです。もしかしたら、今よりも豊かだったのかもしれないと感じさせられました。ですから、そういうキャラクターが普通に生きている姿を描きたくて、いろんな意味を込めて登場させました。
映画を拝見した際、キャストの皆さんの新潟弁がとても自然で印象的でした。これもプロットを形にする際に心がけたポイントなのでしょうか?
白石 そうですね。もちろん、今でも言葉は残っていますが、昔は日本が一つの国ではなく、いろんな国の集合体でした。他国の言葉は今でいう外国語のようなもので、その言葉の違いを持つ人々が戦っているのがリアルだと感じました。罪人の中でも、新発田ではない人々が新発田以外の方言を使うのは当然のことで、新発田の人々が新潟弁を話すのが自然だと思いました。プロットには方言についてあまり書かれていなかったのですが、作ってみるとキャラクターが生き生きとしてきました。
木竜 俳優の皆さんも方言の練習をしながら役作りをしていたので、方言に助けられていた部分も大きかったと思います。それが映画を豊かにしてくれたと感じています。新発田の人々が「シバタ(バにイントネーション)」と言い、外の人々が「シバタ(シにイントネーション)」と言うというのも、方言の先生に確認して、うちのおばあちゃんもそうかもと気づいたんです。方言の微妙なイントネーションやルールをできる限り再現することを意識しました。
コラボグッズについてお伺いします。今回の商品について率直な感想をお願いします。
木竜 グッズが出るなんてなかなかないですし、私はもともとこの月岡ブルワリーを飲んでいて好きだったので、クラフトビールのラベルに11人の賊軍たちの名前が書かれているのも素敵です。企業さんや地元の愛情を感じられるので、映画を観た後にグッズを見ると楽しさが増すと思います。映画を見ながら飲むのも良さそうですね。

最後にメッセージをお願いします。
木竜 溝口加奈を演じました木竜麻生です。白石さんとご一緒できてとても嬉しかったですし、地元で撮影された映画ということもあって、たくさんの学びがありました。この映画にとても思い入れがありますので、ぜひ映画館で楽しんでいただきたいです。地元の皆さんには、スタッフやキャストの皆さんの愛情が込められた作品をぜひ劇場でご覧いただきたいです。
白石 戊辰戦争時の新発田の話はある程度史実に基づいていますが、実際にこういうことがあったわけではなく、フィクションとして組み立てています。それでも、大作の活劇として楽しんでいただけたら嬉しいです。戦争を描いた映画でもありますので、その背後には多くの犠牲があり、今の平和があるのだということも感じてもらえれば、映画を作った価値があると思っています。ぜひスクリーンで楽しんでください。
【千原せいじさん&小柳亮太さんインタビュー】

新潟市出身、元幕内力士が引退直後に俳優デビューとなった今作品。共演したお笑いコンビ・千原兄弟の千原せいじと共に作品の魅力と現場でのエピソードを語っていただきました。
小柳さんは、新潟市出身で、元幕内力士という経歴をお持ちです。今回の映画で俳優デビューを果たされたとのことですが、そのきっかけや撮影現場での体験について教えていただけますか?
小柳 実は引退直後にこの作品で俳優デビューさせていただくことになりました。オファーをいただいたとき、実はダイエットをしていたんですが(笑)、監督から「とにかく痩せないでくれ!」って言われて。大きい身体の俳優が必要だったみたいなんです。それで、痩せるのをやめました(笑)。
撮影現場でのエピソードがあれば、ぜひ教えてください。
小柳 現場は本当に過酷でした。演技をしようにも、まずは体力を持たせるのが大変で、撮影中はとにかく疲れ果てていましたね。でも、その中で千原せいじさんがいつもみんなを笑わせてくれたんです。現場の雰囲気が明るくなって、すごく助かりました。
せいじ そうですね、1番若い子でも20代の方がいらっしゃったら、やっぱり50代のおじいちゃんやから、しんどいわけ。疲れも取れへんし、時代劇だからみんな刀を腰にさしてるんやけど、毎日や。みんな話さんでええよって言われたけど、それでもよう喋ってたなあ(笑)。でも、本当に自分の体力の衰えに愕然とした。寒かったし。ただ、怪我をしないように精一杯やりました。
せいじさんご自身はいかがでしたか?現場での印象や役作りについてお聞かせください。
せいじ 僕は坊主役なんで、戦うシーンとかないんですよ。だから、戦いの緊迫感を味わうというよりは、現場で思ったことを大きな声で言ってただけです(笑)。「これが終わったらみんなで飲みに行くぞ!」とか、そんな感じですね。
試写会で映画をご覧になった時の感想はいかがでしたか?
せいじ 試写を見たとき、まず僕のお経がすごく下手だったなって思いました(笑)。今ならもっと上手にできるんですけどね。実は今年の5月に天台宗の僧侶になったんですけど、その後の方がずっと上手くお経を唱えられるようになったんです。
映画の見どころについてお聞かせください。
せいじ この映画は、十一人のメインキャラクターだけじゃなく、史実とフィクションをうまく絡めて描かれているんですよ。それでいて、単なるエンタメ作品ではなく、人間の感情や関係性がしっかり描かれているところが見どころです。
小柳 時代劇ではありますが、現代の出来事にも置き換えて考えられる部分が多いんです。ただの娯楽作品というだけでなく、メッセージ性も強くて、新潟県民だけじゃなく、全国の人々に新潟の歴史や魅力を伝えられる映画だと思います。この映画を観たら、きっと新潟が好きになるはずです。
(C)2024「???の賊軍」製作委員会
2024年11月1日(金)公開 映画『十一人の賊軍』
監督:白石和彌 原案:笠原和夫 脚本:池上純哉 音楽:松隈ケンタ
出演:山田孝之、仲野太賀/尾上右近、鞘師里保、佐久本宝、千原せいじ、岡山天音、松浦祐也、一ノ瀬颯、小柳亮太、本山力/野村周平、田中俊介、松尾諭、音尾琢真/柴崎楓雅、佐藤五郎、吉沢悠/駿河太郎、松角洋平/浅香航大、佐野和真、安藤ヒロキオ、佐野岳、ナダル/木竜麻生、長井恵里、西田尚美/玉木宏/阿部サダヲ
2024年/日本 配給:東映 ※PG12

●2024年11月1日(金)全国公開。新潟ではユナイテッド・シネマ新潟、T・ジョイ新潟万代、イオンシネマ新潟西、イオンシネマ新潟亀田インター、イオンシネマ県央、T・ジョイ長岡、J-MAXシアター上越で上映。
●また新発田でも上映会が実施されます。
【新発田市 特別上映会】
・11月8日(金)13:00〜
・11月10日(日)@9:30〜 A13:30〜 B17:30〜
会場:新発田市民文化会館

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