新潟絶品餃子 -老舗編-

総務省統計局の都道府県別餃子消費量調査でトップ10にランクインしたことがあるほど餃子好きな新潟県民。今回は変わらぬ味で長く愛され続け、ゆく人の心も胃袋も満たす。そんな老舗の絶品餃子を秘められたストーリーとともにをご紹介します。

楼蘭

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カミフルで愛される優しく力強い味わい

温かい空気に満ちた商店街「上古町」に根を張り約50年。そこに暮らし、働く人たちの胃袋を満たしてきた中華食堂「楼蘭」。入り口横には、思わずのぞき込みたくなる味のあるショーケース。店の中は年季の入った壁のメニュー札、勢い良く水が出る給水器、やけに立派な鳥の剥製…。肩肘張らない、ザ・街の中華食堂といった雰囲気が、何とも居心地がいい。
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やっぱりココと言えば、名物の「酢豚飯」だけど、餃子も忘れてはいけない。「楼蘭」の文字が主張する丸皿に、行儀よく並んだ餃子は、やや粗めに刻まれた豚肩ロース肉に、キャベツやニラ。ニンニクもしっかりだ。驚くほど弾力のある皮も含めて、ここの餃子はとにかくパワフル。そして、どこか懐かしい味わいに箸が進む。そして、餃子の相棒・特製ダレが最高にデキるヤツ。ゴマ油の香ばしさや複雑な辛みがグイっと前に出て、その後をキレのある酸味が追いかける。
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ずっと変わらない味を、家族の絆でつむぐ

「うちの餃子はずっと変わらない味。……のつもりなんだけどね~」と明るく笑うのは、父親からのれんを受け継いだ、井澤昌子さん。8年前、先代が亡くなってからは、母親のフジ子さんに教えを受けながら味を守ってきた。そして今年の2月、フジ子さんが入院してからは試行錯誤しながら妹の光子さんと店を切り盛りしている。
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「先代がレシピを残してくれたんだけど、分量通り作っても、どこか味が違う。調理場で見てはいたけれど、ほとんど教わったことがなかったから。でも記憶を頼りに味を少しずつ近づけていったんですよ。餃子も最初はうまく包めず、『ヒダは7つ!』と母親によく注意されましたね」と、目を細めながらも、餃子を次々と包んでいく昌子さん。もちろんヒダはきっちり7つ。そして、そんな家族の背中を見て、昌子さんの息子・匠さんも料理の道に。勤め先が休みの日などは、重労働の皮作りを手伝ってくれるという。まさに家族総出。
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そんなグッとくる物語を聞きながら食べた餃子は、この街の空気によく似た、優しくも力強い味だった。

五竜閣

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開店時間は3時間だけ。水原の隠れた名店

水原で餃子のおいしい店を聞くと皆、口をそろえてこの店の名前を挙げる。国道49号線から1本細い路地に入ると見える、山吹色ののれん。一見すると、普通の民家のようなたたずまいでちょっと入るのをためらってしまう。意を決してのれんをくぐると、常連客らしきおじさんがご主人と談笑中だった。その手には、なぜかビールと柿の種。あれ……餃子は? 「今日はただ遊びに来てたんだ。常連はみんなこんな感じなんさ」。ふらりとやってきて世間話。そしてちょびちょび飲んで、気が向いたら餃子をつまむ。それがここのいつもの風景。

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現在のご主人は2代目・宇尾野直良さん。初代で父の直衛さんが奥さんのタケ子さんと創業し、直良さんは20代の頃から店の手伝いをしてきたという。調味料の加減や皮の伸ばし方、包み方……あまりにも洗練された手さばきに思わず「すごい」とつぶやくと、「こんなん目分量だがね。おやじからは一切教わってない。要するに目で盗めってことだ」と、ご主人は笑う。先代が亡くなってからは母と2人でその味を守ってきた。5年前からは、母親の介護をしながら店を切り盛りしているので、営業時間は17時~20時頃と、とても短い。それでものれんを掛ければ、見知った顔が集まってくる。この店は、どんなに街の人たちから愛されているのだろうかと、しみじみと思った。

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甘く優しい味は、野菜と砂糖と愛情少々

そんなことを考えていると、あっという間に餃子は完成。こんがりとキツネ色の焼き目が付いた餃子は小ぶりでかわいらしい見た目。「子どもや女性でも食べやすいように、昔からうちの餃子は甘いんだ」とご主人。地元では、持ち帰りにして家族みんなで餃子を囲むのが定番。たしかに、さっきから注文の電話が鳴り響いている。お盆やお祭りなど行事の際は特に注文が多いのだそう。常連のおじさんたちだけではなく、子どもから大人までみんなここの餃子が大好きなのだ。

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そんな話を聞いてると、隣で常連のおじさんが「ここんちの餃子が甘いのは、愛情がこもってるからだこってさ」と自慢げに話す。「何言ってんだ、野菜と砂糖だがね」とご主人。ほほえましいやり取りに、思わず自分も笑ってしまった。ひと口かじると、確かに甘い。ご主人の愛情たっぷりの餃子は、いくらでも食べられそうな気がした。

  • 店名: 五竜閣(ゴリュウカク)
  • 住所:新潟県阿賀野市中央町2-9-22
  • 営業時間:17時〜20時※閉店時間は要問い合わせ
  • 定休日:不定休

長崎亭

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長崎の老舗で学んだ九州名物を新潟へ

日本映画の父・牧野省三しかり、日本人初のNBAプレイヤー・田臥勇太しかり。どんなジャンルにおいても、パイオニアという存在は偉大だ。最初に始めるということは、パワーがいる。話は大きくなったが、ここ「長崎亭」は、初めて新潟に九州名物「一口餃子」を持ち込んだ店である。「今でこそ珍しくないけど、店を始めた40年前は、どこを見渡しても普通の大きさの餃子しかなかったね」と、生地をこねながら話すのはご主人の渡辺泰治さん。

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味のあるスナックやバーが軒を連ねる長岡市の歓楽街・殿町。まだ20時30分の開店前だがシャッターが開いていると見るや「今日は早いね」なんて言いながら常連客がひょこっと顔を出す。「もちっと待って~」。そう言いながら、ぷちぷち生地をちぎり、麺棒を2往復。手元を見ずとも、伸ばした皮の大きさは狂いなくぴったりだ。「もう40年以上作ってるからね。体が覚えるさ」。

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小さな餃子に込められた、パイオニアの情熱

運命の出会いは、奥さんの政子さんの地元・長崎を訪れた時だった。九州では知らぬ人のいない餃子の名店「宝雲亭」。「あそこの一口餃子を食べた時、あまりのうまさに衝撃を受けたね。大きさ、味、薬味、自分の知っている餃子と全然違うんだもん。その味を長岡に持ち帰ると決意して、すぐに修業させてくれと申し出た」。餃子文化の根付かぬ新潟県。さらに、なじみのない一口餃子で勝負すると腹をくくった決断力と行動力。そのフロンティア精神には恐れ入る。そして、長岡の人にこの味を届けたいと熱心に修業に打ち込み、3年後には店を任されるほど腕を上げた泰治さんは、一口餃子を引っ提げて「長崎亭」をオープンさせた。

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この餃子は長岡人の口にも合ったようで、瞬く間に評判になった。「開店当初は餃子一本でやってた。味には自信があったけど、お客さんに恵まれてたのも大きいね。どんどん広めてくれてさ」と笑い、包み終えた餃子をよどみない動きで火に掛ける。「食べてくでしょ」と、出してくれた焼きたて餃子を頬張ると、豊かなタマネギの甘みと薄皮の香ばしさに、図らずも「うまっ」と声が漏れてしまった。佐賀から取り寄せるユズコショウを付けてもう一口。爽やかな風味がのって、これまた美味。酒に合うサイズと味。酔客の口にジャストミートするのもうなずける。この小さな餃子には、入りきらぬほどのストーリーが詰まっていた。

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