新潟大学伊藤ゼミの挑戦!新潟の魅力を伝える日傘Sumbrella

プラン構築5カ月ほどで挑んだコンテスト

新潟大学経済学部にダイアモンドの原石とも言えるビジネスプランを作ったツワモノがいる。「第3回NIIGATAビジネスアイデアコンテスト」では準グランプリ、「たいこうビジネスプランコンテスト2018」では特別賞に輝き、クラウドファンディングでは当初の目標額50万円に到達したため延長して倍の100万円に目標を再設定(7月17日に終了)。製品化へ向け、着々と準備を進めている。商品の名は、新潟らしい柄と折りたたみ日傘を掛け合わせた「Sumbrella(サンブレラ)」。このビジネスプランを作ったのは、経済学部3年生で山形県出身の福岡沙彩さん(写真右)と4年生で新潟県出身の吉村真菜さん(写真左)だ。

日傘を通じて伝える、新潟のいいところ

「プランを考えるにあたり、新潟のイメージと気候の2つを課題として設定。さまざまな視点でマーケティングしました。世界に対してお酒やお米以外の魅力が埋もれて、アピールすることが限定されていないか。ここ最近の暑さや紫外線の強さに対して、しっかりと策を打てているのか。この2つ、一見すると関係性のない課題ですが、うまく組み合わせて、唯一無二のアイデアが生まれたんですよ」。と、目を輝かせながら話す福岡さん。しっかりと、言葉に想いをのせたプレゼンテーションは商品コンセプトへ続く。

今度は吉村さんが話し始めた。「新潟の魅力をヒラく。つまり、日傘を開くことで、新潟の魅力を拓く、という想いを込めたコンセプトです。柄に関しては、萬代橋、錦鯉、トキなど5種ほど考えました。にいがたもよう研究所、専門学校や企業の皆様にご協力いただいたんですよ。また、日傘としての機能もきちんと調べています」。という具合に、プレゼンはどんどん進み、戦略ポジショニング・ターゲティング、売上の展望や販売場所、その先のステップなど、しっかりと考えられている。ビジネスプランコンテストの審査員も、さぞかし「そういうことか!」「なんだか売れそう!」と頷いたことであろう。それもそのはず、2人が在籍しているのは、新潟大学経済学部経営学科の伊藤龍史准教授のゼミだからだ。

入りたくても入れない!新潟大学で最高クラスの人気ゼミ

伊藤龍史准教授のゼミは、新潟大学の中で人気が高く、簡単に入ることはできない。なんと!1人1人面接があり、ほぼ毎年、定員の4倍もの学生が応募するという。どの生徒に聞いても「すごく人気なんです、伊藤ゼミ。なかなか入れないんです」と。伊藤准教授ご自身に聞いても「おかげさまで人気なんです。全員面接して、ちゃんと学生を見ています!」。…わ、わかりました。過去、伊藤ゼミからビジネスコンクールに参加した学生は数多く、日本代表として世界大会に出場したチームもあるという。「私のゼミでは、マーケッターの育成とアントレプレナーシップの育成、2つの育成をしています。それぞれの役割を決めてチーム編成をするのですが、福岡さんと吉村さんは2名で、しかも学年も1つ違い。他とは異なる珍しさがありました。マネジメント力にも優れていたので、コンテストでは勝てる!と思いました」。

ちょっと話はずれてしまうが、伊藤准教授は新潟の起業家を支援する活動をしていたり、新潟でスタートアップを定着させようとLABOを作ったり、行政と一体となった取り組みもしたり。アメリカのシリコンバレーで定着しているスタイルを積極的に、そして多くの若い人へ、そして起業家を目指す人たちへ伝えている。2018年には、米国ラスベガスで開催された国際学会「ASBBS(The American Society of Business and Behavioral Sciences)」で、単著論文が学会賞の「Best Paper Award(最優秀論文賞)」を受賞。“伊藤龍史”の名は世界中に知れ渡った。そんな伊藤ゼミは最先端のことが身について、ビジネス思考の基礎が築けて、そして面白い。人気なワケです。

新潟から世界へ。広がっていくSumbrella

「クラウドファンディングのリターンがありますから、8月末までにはなんとか商品を作りたいです」(福岡)。Sumbrellaは現在、プロトタイプや具体的な商品サンプルはない。生地に小千谷縮を使うか、ほかの部品に新潟らしい材料を使うかなど、限られた予算の中での試行錯誤は続く。そして、完成イメージが描けた後は、どこで、どう販売するかということも課題だ。「訪日外国人たちへ新潟土産としても手にとっていただきたいです。2020年には東京オリンピック、2025年には大阪万博がありますから、インバウンド需要も狙っています。もちろん、今までお世話になってきた方たちにもご協力いただきたいです!」(吉村)。吉村さんは4年生で、来年は社会人になる。だが、このSumbrellaの取り組みは、福岡さんとゼミ生の後輩に受け継がれる予定だ。「先輩が作ったビジネスプランを、卒業と同時に終わらせのではなく、後輩が受け継ぎ、しっかりとビジネス化していきます」(伊藤)。

アイデアひとつで世界を驚かせたり、そのアイデアが明るい未来を築くきっかけになったり、世界にはそうしたアイデアを支援する人たちがたくさんいる。「アイデアに価値を見いだし、アイデアやコンテンツ、プランを生み出すことの大切さや起業することの環境を、新潟にもっと浸透させていきたいです」と、伊藤准教授が語るように、吉村さんと福岡さんが考えた「Sumbrella」も、新潟を変えていくアイデアのひとつになるだろう。

Sumbrellaホームページ

https://sumbrella21.wixsite.com/mysite

■伊藤龍史さんのプロフィール

新潟大学経済学部准教授。シリコンバレーのサンノゼ州立大学(カリフォルニア州立大学サンノゼ校)マーケティング・意思決定科学領域客員研究員、ソウル科学技術大学招聘副教授など歴任。研究テーマは、距離や知識境界をまたいだ価値共創・知識統合・組織学習プロセスの解明。2018年、米国ラスベガスで開催された国際学会「ASBBS」において、単著論文「An Exploratory Study for Detecting the Typologies of Offshoring Strategy」が学会賞「Best Paper Award(最優秀論文賞)」を受賞。ゼミにおいてアントレプレナーシップ教育およびマーケティング教育を実践。

取材協力:新潟大学経済学部経営学科伊藤龍史ゼミ

取材・文・撮影:Komachi Web編集部 間瀬博文

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