ご夫婦の二人三脚で作る、味わい深いドイツパン。村上市「Marilla(マリラ)」

集落にひっそり佇む、隠れ家ベーカリー。

新潟県村上市に、ご夫婦2人で営む 「ドイツパン」 専門のベーカリーがあります。店頭販売なし、2日前までの事前予約でのみ購入可能。それでも全国から注文が止まない理由を探りに行ってきました。

ついつい通り過ぎないよう気を付けて

思わず見逃しそうな看板を頼りに進むと、パンの焼けるいい香りが漂ってきました。こちらが村上市にあるドイツパン専門店 「石窯パン工房 Marilla」 です。

手作りの石窯、石臼挽きの小麦…こだわりが詰まったドイツパン

一番人気のパン・ド・カンパーニュ

一番人気のパン・ド・カンパーニュ

こちらで作っているのは、自家製の天然酵母を使う、ずっしりと重たいドイツパン。ドイツ産のライ麦と北海道産小麦「はるゆたか」は、石臼で挽いて全粒粉に。

つやつやの小麦はちょっといい香り

つやつやの小麦はちょっといい香り

イタリアから石材を取り寄せて手作りしたという薪窯に、近所で伐採したナラの薪をくべてパンを焼きます。
「窯は気温や温度に左右されるし、パンの酵母も生き物。毎日同じパンは焼けません」と話すのは、店主の内山秋善さん。

パンを見て「顔色はどうかな」「この子はどうかな」と話しかける内山さん

パンを焼く作業は内山さんと、奥様の順子さんの二人三脚。すべて手作業で、一度に焼けるのは6個程度。一つ一つの「顔色」を伺いながら、じっくりと大切に焼き上げていきます。
こうして焼き上がった「Marilla」のパンがこちら。

手に持つと、ずっしり重みを感じます

手に持つと、ずっしり重みを感じます

焼き上がったパン同士を叩く順子さん。乱暴に扱っているのではなく、音で出来の良しあしが分かるんだとか

焼き上がったパン同士を叩く順子さん。乱暴に扱っているのではなく、音で出来の良しあしが分かるんだとか

「食べてみて!」とその場で焼きたてをカットしてくれました。やさしい

「食べてみて!」とその場で焼きたてをカットしてくれました。やさしい

食べてみると、生地がみっちりと詰まった断面はしっとり。かむ程に香ばしさが広がり、程よい酸味もクセになります。

お客さんの中には『ドイツで食べたのと同じ味がする』と、通い続ける人もいるそう。「コストは掛かりますが、それは本物の素材しか使っていないから。そう言ってもらえるのは嬉しいですね」と内山さん。丁寧で正直なパン作りが、食べる人にも届いている証拠です。

仲良しご夫婦

仲良しご夫婦

明るい順子さんが言うには「いい材料と手間暇、おいしいものを作るのに必要なのはそれだけ。うちのパンには秘密がないんですよ」。

簡単なように聞こえますが、このクオリティーと材料を2人だけで維持していくのは大変なこと。パンへの愛情と、お客さんを思う気持ちがなければ続けられません。

発送するパンに貼るラベルも手作り。リンゴ、ヒマワリの種などを表している

発送するパンに貼るラベルも手作り。リンゴ、ヒマワリの種などを表している

ライ麦100%のパンにもファンが多い

ライ麦100%のパンにもファンが多い

「注文がなくなったら辞めよう、と言い続けて、今年で10年目。大変だけど、お客さんが『おいしい』と言って喜んでくれるのが何よりうれしいんです」と内山さん。

素朴で飾らない味を求めて、今日も全国から注文が止みません。

【今回紹介した店】

情報は掲載当時のものです。念のため電話で情報をお確かめになってからお出かけください。閉店店舗については、随時メンテナンスを行っています。間違いを通報する